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カフジテイク(GⅢ根岸S)

時間が経ってしまったが、先週のダートGⅢ根岸Sは1番人気のカフジテイクが優勝。
このブログで取り上げたキングズガードなども走っていたが、彼らが止まって見えるかのような次元の違う末脚を見せて、豪快に差し切って見せた。
これでGⅠフェブラリーSへの優先出走権を得たわけだから、順調ならば次走は同レースということになる。
父プリサイスエンドは、旧繫養場所であった日高スタリオンの閉鎖に伴い、優駿スタリオンに移動した種牡馬である。
移動後も人気のある種牡馬で、種付頭数100頭越えはしなかったものの、昨年も80頭ほどの種付をこなした。
特に、1歳市場における産駒の馬体の良さには定評があり、種付料に対する産駒の売却価格という生産者の観点から見れば、費用対効果もなかなか良い種牡馬だ。
ただ、カフジテイクもそうだが、ゲートの出で苦労する産駒が少なからず存在する。
プリサイスエンドは、血統的な特徴としてフォーティナイナー(Nasrullah4×4)、SUmming(Nasrullah4×4)、Crisp'n Clear(Bold Ruler3×4を通じてのNasrullah4×5)という血脈を持つように、Nasrullah色の濃い種牡馬である。
カフジテイクも母テイクザケイクがNasrullahクロスを持っていて、その意味ではプリサイスエンドの特徴を活かせる繁殖牝馬だと言える。
プリサイスエンドの中央における重賞勝ち馬は、カフジテイクのほかにグロリアスノアしかいないが、両馬には血統的な類似点がある。

両馬の母父であるスキャンとジェイドロバリーは、どちらもMr.Prospector×Nijinsky牝馬という共通点がある。
プリサイスエンドの配合を考える際には、参考になるかもしれない。
このカフジテイクのように、母父スキャンという血統も評価すべき点だろう。
netkeiba調べでは、BMSにスキャンを持つ産駒の勝ち馬率は3割を記録している。
これはかなり高い数字だ。
それらのなかで重賞を勝っている産駒は、カフジテイクのほかにワイドバッハとメイショウマシュウ、そしてレッドアゲートがいるが、彼らの重賞勝ちがすべて東京コースに集中しているのは興味深い。
スキャンの母Videoは名種牡馬Caerleonの全妹であるが、直線の長いコースが多い欧州でCaerleonが種牡馬として活躍したことを考えれば、近親のスキャンにもそのような適性があるのかもしれない。
このスキャンの娘であるテイクザケイクは、これまでに非常に優れた繁殖成績を残している。
カフジテイク以外にもう1頭の重賞勝ち馬テイクアベット(5勝、GⅢサマーチャンピオン)を出しているほか、テイクエイム(4勝)やテイクファイア(4勝)も送り出している。
牝系を見ても、テイクザケイクを通じたライン以外ではそれほど繁栄している様子もないので、テイクザケイク自身が特別なのだろう。
そう考えると、その父スキャンは牝系を強化できる血脈と位置付けてよい気がする。
例えば前述したワイドバッハもそうで、スキャンの血が母父に入ったことにより、彼以外にもOP馬の半弟メイショウイチオシがでるなどの活躍を見せている。
テイクザケイクに関しては、スキャンの血を強化できる配合パターンを持つ点にも注目すべきだ。
すなわち、Video≒ラシアンルーブルによる相似クロスである。

この2つの血脈は、テイクザケイクの代においては2×2のポジションに位置するが、いずれも父がNijinskyであり、母方にPrincequilloを持つ点で共通する。
テイクザケイクの血統に関しては、スキャンをはじめとしてラシアンルーブルやトウショウボーイなど、他にも牝系を強化できる血脈が好ましいポジションに位置している。
現役時代は中央で4勝したテイクザケイクであるが、むしろ繁殖牝馬になってからのほうが期待できる血統パターンの持ち主だ。
その息子カフジテイクの血統パターンで言えば、母がテイクザケイクという点だけで優れているのだが、母父スキャンが持つMr.Prospectorをクロスさせているのもダート系スピードを強化する意味では重要だろう。
また、Cold Reception≒Videoという相似クロスも特長的だ。

まず、Cold Receptionの母Cold ComfortとVideoの2代父Northern Dancerは、いずれもNearctic×Native Dancer牝馬という組み合わせを持つ。
次に、Cold Receptionの父SecretariatとVideoの母Foreseerは、いずれもNearco系×Princequillo系のニックを持つ。
Foreseerに関しては、上記血統表ではNearcoの名前を見つけることはできないが、Turn-toの2代父がNearcoである。
このように、カフジテイクの血統は母父スキャンをはじめとした血脈をうまく活かした配合というのが私の考えだが、やはり何と言っても母テイクザケイクの質が高いのが最大のポイントだろう。
一見すると、テイクザケイクは流行の血脈を持ち合わせていないように見えるだろうが、
①競走成績がある程度優れていること、②牝系を強化できる血脈が何代も重ねられてきたこと、③相似クロスのような血統的なアクセントをどこかに持っていること。
こういう特長を備えているのは、繁殖牝馬として非常に好ましい。
近年、血統的に優れた種牡馬が日本に輸入されてきたり、それらの血を受け継ぐ馬がスタッドインしている。
それらの血が入ることで、血統的な派手さはなくても、テイクザケイクのような配合的に優れた牝馬たちが繁殖牝馬として成功する例が今後も増えていくだろう。
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モーリス(GⅠ天皇賞・秋)

私の東京競馬場に対する印象を血統的見地から述べるならば、「Hyperionの強い馬が活躍する競馬場」と評するだろう。
Hyperionの影響が強い血統パターンを持つ馬は、スピードが持続する傾向にあり、直線の長い東京コースはその能力を存分に発揮できる競馬場だと言える。
モーリスの父スクリーンヒーローもまた、Hyperionのインブリードを持つノーザンテーストやMountain Flower、あるいはHyperionを4本持つグラスワンダーなど、全体にHyperionの強い血統パターンを持つ。
実際、スクリーンヒーロー自身の競走成績はジャパンC、アルゼンチン共和国杯と重賞は2勝のみだが、この2つのレースはいずれも東京コースである。
付け加えるならば、2着した秋の天皇賞も東京コースだ。
全体にHyperionの血に恵まれたスクリーンヒーローであるが、より近い世代での血統的特徴を挙げるならば、Hail to Reason系×Northern Dancer系の組み合わせを活かした点だろう。
上記モーリスの血統表を見てもわかるように、スクリーンヒーローは父グラスワンダー、母ランニングヒロインともにHail to Reason系×Northern Dancer系の組み合わせを持つ。
同じ血統傾向を持つ馬同士の「相似配合」とも言える血統パターンであり、こういう血統がいつも好ましい結果をもたらすとは限らない(実際、全妹は中央未勝利に終わっている)が、成功した時の爆発力は大きい。
相似配合といえば、スクリーンヒーローの3代母モデルスポートには、モデルフール≒Red Godという相似クロスがある。

2つの血脈は互いにMenow、Blenheim、Bull Dogを持つ点で共通している。
彼女の孫娘ランニングヒロインの代から見れば、モデルフール≒Red Godの関係にCosmahを加えた相似クロスとも言える。
この場合、3者それぞれがPharamondやBlenheimを有する関係であり、加えてCosmah≒モデルフールについてはBlue Larkspurを持つ点でも共通する。
スクリーンヒーローの場合には、サンデーサイレンスやノーザンテーストといった非常に影響力の強い血脈が直父系ではなく、母系のほうに入っている点にも好感が持てる。
グラスワンダーの血統も、一般的には良血と言って良いレベルにあるが、その種牡馬成績や産駒の馬体のバラつきを見ると、極端に遺伝的影響力の強い種牡馬とは思えない。
これは、グラスワンダーが種牡馬としてレベルが低いと言っているのではなく、繁殖牝馬側の影響力を引き出しながら産駒に能力を伝える種牡馬ではないか、ということである。
この観点に立てば、「影響力が絶大なサンデーを母父に持つ種牡馬ならば、どれでも成功するのでは?」と考えることもできる。
ただ、その点について私は異なる見解を持っていて、例えばすでに何世代か産駒を送り出しているアドマイヤムーンや来春から供用されるドゥラメンテについては、スクリーンヒーローとはまた違ったタイプの種牡馬なのではないかと思っている。
アドマイヤムーンについては、父エンドスウィープの産駒の勝ち上がり率が驚異的であり、フォーティナイナー系らしい直父系の影響力をアドマイヤムーンやその産駒にも伝えている印象がある。
もちろん、産駒によってはサンデーの影響が程よく受け継がれる馬も存在するだろう。
ドゥラメンテに関しては、父がリーディングサイアーの獲得経験がある名種牡馬キングカメハメハであり、母方も代々GⅠ勝ち馬という文字通りの超良血馬。
母父サンデーも含めて、産駒は父ドゥラメンテを通じてどのラインからも影響され得ると考えられる。
そう考えると、ドゥラメンテのような種牡馬に対しては、それほど遺伝的影響力の強くない繁殖牝馬(血統の質は高いほうが良いと思うが)と配合したほうが、好ましい結果を得られるかもしれない。
実際、ドゥラメンテに関しては、牝系を強化できるレベルの種牡馬だと思っている。
さて、モーリスの話題から離れてしまったが、ここからは彼の母メジロフランシスの血統に目を向けてみる。
彼女自身は他界したとのことで大変残念ではあるが、モーリスという稀代の名馬を送り出してくれた。
彼女の父カーネギーは、Sadler's Wells×凱旋門賞馬Detroitという良血で、自身も凱旋門賞を勝っている。
種牡馬成績が期待ほどではなかったためか、その血はそれほど残っていないが、こういう良血は牝系に入ると効果を発揮する。
興味深いのは、彼の4代母VaneuseがTeddy3×3を持ち、その娘であるカーネギーの3代母Miss BarberieはTeddyを3×4・4で継続クロスし、さらにその娘Derna(カーネギーの2代母)もまたTeddyを4×4・5・5で持つ点だ。
そのDernaの娘であり、カーネギーの母である凱旋門賞馬Detroitについては、その父Rivermanの2代母Nile LilyがTeddy3×3を持つ。
このように、Teddy系の血が強いDetroitに対して、Hyperion4×5を持つSadler's Wellsを配合して凱旋門賞馬カーネギーという結果につながったのは、偶然ではないかもしれない。
なぜなら、HyperionとTeddyは祖先にBay Ronaldを持つ点で共通しているからだ。
一方、メジロフランシスの母系に目を向ければ、3代母に最優秀3歳牝馬の名牝メジロボサツの名前を見つけることができる。

彼女の血統的特長は、血統表からわかるようにBlandford4・6×4・5のラインブリードにあるだろう。
彼女にフィディオンが配合されてメジロクインシーが生まれたのだが、フィディオンの2代父TanerkoはBlandford4×4を持つ。
このメジロクインシーにモガミを配合して、重賞4勝のメジロモントレーが生まれたことには注目したい。
モガミという種牡馬は父がGainsborough5・6×5を持つLyphard、母ノーラックはTeddy5・6×5・5のクロスを持っている。
そこにBlandfordの血が強いメジロクインシーを配合すると、興味深い組み合わせが誕生する。

3つの血脈を、1つの血統表に押し込めて比較してみた。
血統表の比較から、Blandfordの3代母Black Duchessが、GainsboroughやTeddy内にあるBay Ronaldの母であることがわかる。
私が愛読しているケン・マクリーン著の「クラシック馬の追求」のなかで、Teddy-Bayardo(Gainsboroughの父)-Blandfordの組み合わせは、Black Duchessが息子と娘を経てクロスするので、非常に有効な方法だと書いてある。
メジロモントレーは、その好例ではないか。
ここで忘れてはならないのが、カーネギーの血統パターンである。
上記で考察したように、カーネギーはHyperionやTeddyを通じてBay Ronaldを豊富に持つ点を指摘した。
そのBay Ronaldの母がBlack Duchessであることを考えると、カーネギー×メジロモントレーから生まれたメジロフランシスは全体にBlack Duchessの影響が強い、優れた血統パターンの持ち主だと見なせる。
配合というものはいつも良い結果をもたらすわけではなく、メジロフランシスのような優れた血統パターンであっても、現代のスピード競馬のなかでは重厚すぎたのかもしれない。(彼女は未勝利で現役を終えている)
ただ、この血の質の高さは繁殖牝馬として活かされた。
特に、スクリーンヒーローのようなサンデーの血を引く種牡馬とは、相性が良かったのだろう。
サンデーサイレンスは、Mahmoud4×5を持つほか、その2代母Mountain FlowerはHyperion3×4である。
この2つの血はGainsboroughを持つ点で共通しているが、Gainsboroughが祖先にBlack Duchessを持つことは既述した。
つまり、メジロフランシスにサンデーの血を持つ種牡馬は合うはずなのだ。
実際、メジロフランシスの仔で中央勝ちしているのはモーリスのほか、メジロポッター(父メジロベイリー)とピッツバーグ(父ダノンシャンティ)がいるが、これらの共通項はサンデーの血を持つ種牡馬が父であるという点である。
逆に、サンデーの血を持たないメジロフランシス産駒は中央勝ちしていない。
モーリスの場合、父スクリーンヒーローがサンデーの血を持つほかに、特にHyperionの血が強い点もプラスに作用しているのだろう。
祖先のBlack Duchessの強化にもつながるし、母系にカーネギーを通じてSalder's Wells(Hyperion4×5)を持つモーリスは、父スクリーンヒーローのHyperionも上手く活かしながら、東京の長い直線で素晴らしいパフォーマンスを見せた。
次走は香港になるのだろうが、血統はもちろん、筋肉の発達したあの素晴らしい馬体ならば勝算は十分にあるだろう。
個人的には、そこから先の「どのような種牡馬になるか」というところに思いを馳せている。
キョウエイギア(GⅠジャパンダートダービー)

今年のジャパンダートダービーは、4番人気のキョウエイギアが直線外から力強く抜け出して快勝。
逃げていたケイティブレイブも粘って2着したのは強いと感じたが、今回のレースではキョウエイギアの強さが際立っていた。
青森県産のGI馬であり、先代のワールドファームさんとは面識があるが、本馬の生産者は個人名なので後継ぎさんなのだろう。
母のローレルアンジュも同牧場生産馬で、交流G2のエンプレス杯を勝った名牝だ。
最近は飼育管理が発達してきて、活躍馬の母や良血馬の母から活躍馬が出るパターンが多くなってきた。
大手牧場や日高だけでなく、青森からもGⅠ馬が出てくると、日本の馬産が総じてレベルアップしているのを実感する。
父ディープスカイについては、過去にXファクターに関する記事で触れてはいるが、本馬は牡馬なので直接的な関係はないことになる。
彼はダービーとNHKマイルCの勝ち馬で、サンデー系種牡馬でもあるので、当初は芝系の種牡馬として期待されていた。
ところが、産駒はなかなか芝で勝ち切れないところに、ダート替わりで活躍する産駒が増えてきたのである。
最近は、キョウエイギアのように最初からダートで使われる産駒も多くなってきた感がある。
Target調べでは、ディープスカイ産駒はこれまで中央で93勝しているが、そのうちダートでの勝ち鞍が71勝というデータがある。
その71勝のなかで、ダート1700~2000での勝ち鞍がなんと46勝。
全勝ち鞍の約半分、がダート中距離で挙げられたことになる。
要は、ディープスカイはダート中距離向きの種牡馬なのだ。
そう割り切ってディープスカイ産駒を見ると、種付料50万円(受胎条件)の種牡馬の産駒としてはかなり活躍しているように思う。
今後、同産駒がセールなどで人気が再燃する可能性は十分あるだろう。
さて、そのディープスカイの血統的特長だが、やはり彼の母アビの血統パターンが魅力的だ。
まず、Secretariatが持つBold Ruler×Princequilloの組み合わせを、間接的ではありながらアビの母Carmelizedも持っている点が評価できる。
この組み合わせは、Nearco系×Prince Rose系によるニックスの延長線上にある組み合わせであり、ディープスカイが種牡馬になった際には強化したい血脈でもある。
しかし、アビの血統で最も評価すべきは、何と言ってもMiss Carmie4×3の牝馬クロスだろう。
牝馬クロスは、質の高い瞬発力を伝える傾向にある。
この血をクロスとして持っているわけではないが、息子のディープスカイは優勝した2つのGⅠレースで、いずれもメンバー最速の上り3Fを計測している。
それだけ切れる末脚を使えたということは、血統面からは母の持つMiss Carmieクロスが何かしらの影響を与えたのでないかと推測できる。
もちろん、ディープスカイの場合は多くのサンデー系産駒が持つAlmahmoudの牝馬クロスも持っているので、その血が影響した可能性も大いにある。
それでも、このMiss Carmieクロスの存在は、キョウエイギアにとって大きい。
このMiss Carmieと、キョウエイギアの母ローレルアンジュ内のSweet Tooth(Alydarの母)との間に血統的親和性があるからだ。
互いにNasrullah、PonderそしてTwosy=Two Leaを持つ点で共通している。
この組み合わせに魅力を感じて、以前この血統パターンを持つ配合を試みてみたが、残念ながら結果は伴わなかった。
血統的にも馬体的にも面白いと思っていたのだが、だからと言って結果が出るとは限らないのが競馬の世界である。
そこで発想の転換を図るか、あるいは「それでも…」と足掻いて信念を貫く配合をし続けるのか。
私の場合は、ケースバイケースといったところだろう。
長らく配合に携わっていると、血統的な相性だけを求めても結果が出ない配合もあることを痛烈に思い知らされる。
馬体や気性も、非常に重要なファクターなのだ。
さて、話しが脱線してしまったが、キョウエイギアの配合に再び目を向けると、Chief's Crown≒パラダイスクリークの組み合わせも無視できない。
この2つの血脈は、いずれもNorthern Dancerを持つ点で共通している。
加えて、Chief's CrownはSecretariatを、パラダイスクリークはRivermanというNearco系×Prince Rose系の組み合わせから成るニックスの血脈を持つ点でも同じだ。
もう一つだけ、キョウエイギアの血統的特長を挙げるならば、Raja Baba≒Irish Riverだろう。
いずれもNasrullah系×Djebel系から成る血脈同士の組み合わせだ。
実はここまで指摘してきたBold Ruler×Princequilloの組み合わせ、Miss Carmieの血脈強化、Chief's Crownを活かす相似クロス、そしてNasrullah系×Djebel系の組み合わせを活かすという一連の配合手法は、GⅠ全日本2歳優駿を制した同父のサウンドスカイと全く同じである。
強いて言えば、サウンドスカイの血統においてはMiss Carmieの活かし方がMiss Carmie≒Sweet Toothではなく、Miss Carmie≒Tim Tamになっている。
Tim Tamは、サウンドスカイの母父Gone West内に含まれる血脈である。
こうして見ると、ディープスカイ産駒の成功パターンが垣間見えてきた気がする。
そのうち、またディープスカイを配合する機会があるかもしれない。
ソルヴェイグ(GⅢ函館スプリントS)

先週開催されたGⅢ函館スプリントSは、12番人気の3歳牝馬ながら、ソルヴェイグが見事レコードで優勝。
ちなみに勝ったソルヴェイグは斤量50kg、2着のこれまた3歳馬シュウジが52kgであった。
この斤量を活かしたところはあるかと思うが、ソルヴェイグもシュウジも重賞勝ちの実績がある馬たちなので、その実力も認めなければならない。
ソルヴェイグの父ダイワメジャーに関しては、以前コパノリチャードの考察で取り上げている。
ダイワメジャー産駒は、サンデー系のなかでも比較的筋肉質であり骨格もしっかりしているのが特長で、それらに裏付けされた上質のスピードが持ち味だ。
その反面、ディープや他の芝向きサンデー系種牡馬と比べると、瞬発力という点ではやや割引が必要な系統でもある。
ソルヴェイグのように重賞勝ちをするような上位クラスの産駒は、総じて自身の絶対スピードを活かした先行タイプが多く、差し脚質の馬は少ない。
ダイワメジャーの血統に関してはコパノリチャードで扱ったので、それを踏襲しながら考察してみよう。
まずは、ダイワメジャーの3代父Hail to Reasonと3代母Consentidaの相似クロスを挙げたい。
この両者はいずれもRoyal Chargerを持ち、さらにはBlack Servant、Man o'War、Sir Gallahad=Bull Dogを持つ点で共通するNothirdchance≒Beau Maxの相似クロスも形成する。
ダイワメジャー産駒から見れば、Hail to Reasonクロスを持てばこの相似クロスの継続強化は可能であり、ソルヴェイグ(Hail to Reason4×6)はまさにその血統パターンを持つ。
ダイワメジャーの血統では、彼の母スカーレットブーケが持つLady Angela≒Alibhaiの相似クロスも特長的だ。
いずれもHyperion系×Tracery系の組み合わせであり、ノーザンテーストがLady Angela3×2を持つ点からも、スカーレットブーケの血統ではLady Angela≒Alibhaiが重要な影響を与えているように思う。
この相似クロスはダイワメジャーの代でプールされたわけだが、ダイワメジャー産駒の代で例えばNorthern Dancerクロスを持つような配合をすると、再びLady Angela≒Alibhaiの強化が可能になる。
その意味では、ソルヴェイグの母アスドゥクールが母父にCaerleonを持つことは理に適っている。
Caerleonが、Hail to ReasonとNorthern Dancerの両方の血脈を持っているからだ。
コパノリチャードも2代母の父にCaerleonを持っているが、彼とソルヴェイグの血統パターンは類似している。
両者の父、母の父、2代母の父それぞれが同父系で、血統的な類似点が多い。
ダイワメジャーにトニービンを持つ牝馬を配合するというのも、ダイワメジャーが持つHyperion系の血の強化をするという点で評価できる血統パターンである。
トニービンがHyperion5×3・5を持っているからだ。
ダイワメジャーがNorthern DancerやHail to Reasonを持つ牝馬と相性が良いという点に話しを戻せば、Caerleon以外にもSadler's Wellsやその全弟のFairy Kingもこれらの血脈を持っている。
例えば、ダイワメジャー産駒のGⅠ勝ち馬として注目を浴びているメジャーエンブレムは、母父オペラハウスを通じてSadler's Wellsの血を持つ。
また、アルテミスSを勝っているマーブルカテドラルの血統にも、母父エリシオを通じてFairy Kingの血が存在する。
ソルヴェイグの血統パターンにもう少し目を向けると、Consentida≒Bold Forbesという関係を見つけることができる。
いずれもBull Lea系×Royal Charger≒Nasrullah系の組み合わせである。
さらに、ソルヴェイグが持つRoyal Charger≒Gulf Stream≒Court Martialの組み合わせも面白い。
Royal Charger≒Gulf Streamについては、ソルヴェイグの2代父サンデーサイレンスの代で持っていた組み合わせであるが、そこにCourt Martialを当てることで再び強化した。
ちなみに、Court Martialという血はLyphardの母父として有名である。
そのLyphardを持つディープインパクトやハーツクライが、競走馬や種牡馬として成功しているという事実は、Royal Charger≒Gulf Streamを活かす意味で何か関係しているのかもしれない。
ジャングルポケットやCaerleonを持つソルヴェイグが、なぜ短距離馬なのかと感じるかもしれないが、自分の考察からすると父ダイワメジャーが持つスピードをうまく引き出す配合になっていると思う。
それが、結果的に短距離でも対応できるスピード馬を誕生させた要因ではないかと考える。
今日は、今現在も雨が降っているような状況。
早目に牧草を終わらせたいのだが、このままでは相当遅れるだろう。
今年は、セレクトセールへの参加も怪しい感じだ。
まったく、忌々しい天気である。(苦笑)
ルージュバック(GⅢエプソムC)

GⅢエプソムは、1番人気のルージュバックが優勝。
1年4か月ぶりの勝利となったが、ここに至るまでの過程は陣営にとって大変なものだっただろう。
この勝利を契機に、秋のGⅠ戦線でも活躍を期待したい。
さて、そのルージュバックだが、父は昨年亡くなったマンハッタンカフェである。
マンハッタンカフェの血統で特徴的なのは、Halo≒Bold Bikiniの関係だろう。
上記の血統表を見ただけでは、両者の血統的親和性がそれほど高そうには見えない。
しかし、両者の直父系がRoyal Charger≒Nasrullah(4分の3同血)であり、Nothirdchance≒AlablueがいずれもBlue Larkspur系×SIr Gallahad系の組み合わせを持つ。
さらには、HaloとBold Bikiniいずれの母系にも、MahmoudとSeleneの血が入っている。
このHalo≒Bold Bikiniの関係が自分の想像以上に重要なのか、マンハッタンカフェ産駒においては、HaloやBold Bikiniに関係する血脈を強化すると活躍傾向にある。
例えば、産駒のなかで最多獲得賞金のエーシンモアオバーはMr.ProspectorとNijinskyを持っているが、Mr.ProspectorはBold Bikiniの父Boldnesianと組み合わせのクロス(Nasrullah系×Polynesian系)を形成し、Nijinskyはマンハッタンカフェの2代父Haloと血統的親和性が高い関係にある。
GⅠ馬のヒルノダムールはHaloの母Cosmahを4×6で持つほか、Halo≒Red Godの相似クロスも形成する。
エーシンモアオバーやヒルノダムールに限らず、マンハッタンカフェ産駒で活躍している馬には、母系にNorthern Dancerを持つ馬が多い。
これは、もしかするとBold Bikini≒Northern Dancerができるためだろうか。
両者の血脈は、まずBoldnesian≒Northern DancerによるNearco系×Polynesian系の組み合わせの強化があるほか、互いにHyperionとMahmoudを持つ点でも共通する。
では、ルージュバックの母ジンジャーパンチはどうかというと、やはり彼女もNorthern Dancerの血を持っている。
ジンジャーパンチは米GⅠを6勝した名牝で、BCディスタフも制して米古牝馬チャンピオンにも選ばれている。
その血統はというと、血統パターンという観点からはどうにも高評価できないレベルだ。
Northern Dancer≒Mr.Prospector≒Bold Ruckusが織りなす、Nearco系×Native Dancer系による組み合わせクロスの強化は見られる。
あるいは、そこから派生してこれら3つの血脈とRed Godによる血統的親和性に着目すべきかもしれない。
これらの血脈が、Nearco系×Sickle(Pharamond)系という点で共通しているからだ。
でも、それ以外の血統パターンに関しては、ジンジャーパンチの3代母が牝馬クロスを持っているとか、Xファクターの観点から評価すべき血脈が存在するとかはあるものの、スペシャルな感じがしないのだ。
それでも、彼女が優秀な競走成績を収めた事実は変わらない。
あるいは、これが血統論の限界だとも言える。
強いて血統にこだわった上で彼女を繁殖牝馬として見るならば、こういう牝馬には血統的にいかにも相性が良さそうな種牡馬か、もしくは圧倒的な遺伝力を誇る種牡馬を選ぶのが良いと思う。
ルージュバックはこの場合、前者に当たる血統パターンを持つ。
上記のルージュバックの血統表を見てわかるように、彼女はマンハッタンカフェ産駒の成功パターンであるBold Bikiniの血を活かすべく、その父Boldnesian5×5のクロスを持つ。
さらに、このBold BikiniやBoldnesianと血統的親和性が高いNorthern DancerやMr.Prospectorを母側に持っている点も、彼女の血統的特長である。
また、母側にRed Godも持っているので、この血と相性の良いHaloも活かすことができるので、これもマンハッタンカフェ産駒の成功パターンに合致する。
ルージュバックの代においては、父母の代で存在しなかったWishing Well≒Wise Exchangeという組み合わせも派生した。
いずれもPromised Land系×Hyperion系という組み合わせから成る。
このようにルージュバックの血統を考察してみると、ジンジャーパンチの血を活かす意味で、マンハッタンカフェは最適な種牡馬の一頭だったと思う。
彼亡き今、今度はディープインパクトのような圧倒的な遺伝力を誇る種牡馬と交配されたとき、どのような競走成績をもたらすか興味深い。
ここに来て重賞勝ちしたこと、父がやや晩成傾向にあったこと、そして母が古牝馬チャンピオンだったことを考慮すると、ルージュバックも古馬になっての成長が期待できる。
父母同様に、GⅠタイトルに手が届くか。これから迎える秋の競走成績がポイントになってくると思う。
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Author:G
馬産地・日高に住む某牧場関係者
不定期に血統ブログをup中