私的血統論

馬産地・日高地方から競走馬の血統を考察するブログ
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馬のスピード遺伝子(ミオスタチン)

遺伝学に詳しい方や血統派の人たちのなかには、ウマにおける全遺伝子情報の解読が2009年に完了したことをご存知の方も多いはず。

これにより馬の毛色や体高に関わる遺伝子など、さまざまな発見がもたらされている。

そのなかで、いま世界中で注目されているのが、馬の距離適性に関わる遺伝子の特定とその研究成果である。

ミオスタチンと呼ばれるこの遺伝子は、筋量を抑制する役割を持っている。

ミオスタチンの機能が向上すると馬の筋肉量は少なくなり、その遺伝子機能が減少すると筋肉量が多くなるという具合だ。

ミオスタチン遺伝子には、C型とT型という2つの変異体があり、その組み合わせにより3タイプが存在する。

すなわちC:C型、C:T型そしてT:T型である。

これに関連して、愛国の遺伝学者であるE・ヒル博士と同国の一流調教師であるJ・ボルジャー氏が、共同で馬の遺伝子検査サービスを提供する「エクイノム」社を設立した。

この会社が提供する「エクイノム・スピード遺伝子検査(Equinome Speed Gene Test)」は、当該馬から採取した血液サンプルを遺伝子検査にかけてC:C型、C:T型、T:T型のどのタイプであるかを特定するサービスである。

驚くべきは、そのミオスタチン遺伝子の組み合わせによって、馬の距離適性が高い確率で予測可能だというのだ。

エクイノム社の研究結果によると、C:Cタイプはスピードがあり筋肉質の馬体をしていて、いわゆるスプリントタイプ。

その距離適性は1000~1600Mだとしている。

C:Tタイプは、ある程度の速さを持つ中距離タイプで、その距離適性は1400~2400Mとされる。

T:Tタイプは、この3つのタイプのなかでは最もスタミナのあるタイプで、その距離適性は2000M以上となっている。

実は昨年になって、このスピード遺伝子検査が日本の競走馬理化学研究所でも検査可能になった。

この検査を普及させる目的のためか、厩舎関係者に説明会が開かれたと聞いているし、実際に馬産地でもミオスタチンとその検査に関する講演会が複数回開催されている状況だ。

すでに日本においてはミオスタチンの研究がされていて、あるデータによると無作為に抽出したある馬群に対して実施した遺伝子検査の結果、C:Cが17%、C:Tが56%、T:Tが27%であったという。

さらに、あるOP馬群の遺伝子タイプを解析した結果、C:Cが16%、C:Tが70%、T:Tが14%だったとのことだ。

このOP馬のグループに関しては、それぞれ1着~3着という馬券圏内に入着した際の平均出走距離が算出されている。

その結果、各馬の出走距離と彼らの持つミオスタチンの遺伝子型に関連性が認められたとの報告がある。

ところで、JRA重賞は全134レース(障害含む、2013年度現在)あるが、これをC:C、C:T、T:Tの距離適性と比較するために、①1400M以下②1600M~2400M③2500M以上、と3つのグループに分けてみた。

結果は①1400以下の重賞の数が25レース(19%)、②1600M~2400Mの重賞が90レース(67%)、③2500M以上の重賞が19レース(14%)という内訳であった。

こうしてみると、無作為で抽出したグループに比べて、OP馬のグループによるミオスタチンのタイプ比率のほうが、日本の重賞レース体系の距離分け比率と酷似しているのがわかる。

視点を変えれば、OP馬のような能力の高い馬ほど本来その馬たちが持つ距離適性に合ったレース選択がなされていて、その結果“OP入り"という好成績につながった、という考え方もできる。

では、他国の場合はどうか。

例えば、オーストラリアのG1競走は短距離レースの割合が多く、国内の全G1レースのなかで1400M以下のG1の割合は37%とのことだが、これは米国の20%や英国の12%に比べるとはるかに大きい数字だ。

そして、オーストラリアで重賞勝利経験のある種牡馬および繁殖牝馬を対象(計123頭)にスピード遺伝子検査を実施したところ、C:Cタイプが38%、C:Tタイプが51%、T:Tタイプが11頭だったというデータがある。

ここでも、オーストラリアにおける短距離のG1レースの割合(37%)と活躍馬のC:Cタイプの割合(38%)がほぼ同じだった。

これは単なる偶然だろうか。

もしかすると、各国のレース体系の違いが、それぞれの国における競走馬のスピード遺伝子型の割合に影響を与えているのかもしれない。

エクイノム社がある欧州では、ミオスタチン遺伝子のタイプを公表している馬もいる。

昨年の英2000ギニーで5馬身差をつけて圧勝し、現在は種牡馬として繋養されているDawn Approachも、その一頭である。

Dawn Approach

エクイノム社の共同設立者でもあるJ・ボルジャー師が管理していたDawn Approachは、2歳時(2012年)に6戦全勝して英G1デューハーストS(7F)と愛G1ナショナルS(7F)を制して、全欧2歳牡馬チャンピオンに選ばれた。

J・ボルジャー師はこの馬の生産者でもあるが、ボルジャー師はDawn Approachの父New ApproachがC:T型であることも、母Hymn Of The DawnがC:C型であることも事前に認識したうえで配合し、結果としてC:C型のDawn Approachが生まれたという。

C:T型とC:C型が交配された場合、この遺伝子はメンデルの遺伝の法則に従うので、C:C型かC:T型のいずれかが生まれることになる。

ちなみに、2012年にゴフス社のセリ市でDawn Approachの全妹にあたる1歳馬が上場されたが、この馬は事前にC:Cタイプであることを公表していた。

結局、この牝馬は€775,000という高額で落札された。

もう一頭、欧州に繫養されている種牡馬から例を挙げると、英G1デューハーストSの勝ち馬にして昨年の欧州ファーストシーズンサイアーランキングで第2位だったIntense Focusもミオスタチンを公表している種牡馬だ。

Intense Focus

この種牡馬のミオスタチンはC:C型だという。

また、彼の種牡馬成績は、初年度産駒から英G1ミドルパークS(芝6F)の勝ち馬Astaireを輩出するなど好調だ。

やはりC:C型だけあって、短距離レースの多い2歳戦は得意なのだろう。

Intense Focusの場合に限って言えば、ミオスタチンの遺伝子型と産駒成績に関連性がありそうな印象だ。

Intense FocusはGiant's Causeway産駒だが、日本でも同じ父を持つエーシンスピーダーがスピード遺伝子検査を受けたという。

エーシンスピーダー

具体的なミオスタチン型は公表していなかったはずだが、関係者の話しでは彼には長距離適性があるとのこと。

ということは、エーシンスピーダーのミオスタチンはT:T型なのだろう。

メンデルの遺伝の法則を理解している方なら、C:C型とT:T型の産駒を出せる種牡馬はC:T型だけだとおわかりだろう。

つまり、Intense Focusとエーシンスピーダーのミオスタチン型から、Giant's CausewayはC:T型だと推察することができるのだ。

一方、オーストラリアの種牡馬市場でも、ミオスタチンを公表する動きがある。

これにより、繁殖牝馬のオーナーたちに計画的な配合を推奨しようという狙いがありそうだ。

例えば、オーストラリアのWidden Studでは、繋用されている全9頭のミオスタチンを公表、その内訳はC:C型が7頭でC:T型が2頭だった。

やはり、スピード競馬が盛んなオーストラリアだけあって、そのなかで選別されてきた種牡馬たちは遺伝的にもスピードタイプが多いようだ。

このように、ミオスタチン遺伝子を調査することでそれをビジネスにつなげる動きは、世界中で広がりを見せつつある。

米国においては、愛国エクイノム社とは異なる方法でスピード遺伝子検査を実施する会社があり、エクイノム社が血液サンプルを用いて遺伝子検査するのに対し、この会社の場合は採取した鬣(たてがみ)や尾の毛を用いて遺伝子検査をする。

そこで問題となっているのが、毛の採取ルートである。

海外のセリ市などで、一部のバイヤーが購買候補の馬の毛を勝手に抜いて、遺伝子解析に回すケースが起きているというのだ。

さらに、このような事態を受けて、それを規制するような動きもあるとか。

急速な拡がりを見せているスピード遺伝子検査であるが、ここで注意しなければならないのは、ミオスタチン遺伝子のタイプが馬の距離適性を100%確定させるものではないということである。

実際、研究結果のなかには、T:T型にもかかわらず短距離で勝利するような馬の存在も複数報告されているという。

つまり、これはあくまで科学的根拠に裏付けされた一つの『指標』であり、その扱い方を誤らないことが大切なのである。

例えば、生産者や繁殖馬のオーナーは、スピード遺伝子検査を利用することにより距離適性を予測しながら配合できるかもしれない。

調教師は、管理馬の遺伝子型を調べることにより、『どの距離で出走させれば十分な能力を引き出せるか』という一つの判断材料を得ることができるだろう。

一部海外メディアによる記事では、この検査と一連の動きについて『聖杯を手にするにも等しい』と評していたが、実際その扱い方によっては競馬業界に大きな変革をもたらすかもしれない。
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[ 2014年05月09日 19:22 ] カテゴリ:配合・遺伝 | TB(-) | CM(0)

Frankelに見るGalileo×BMSデインヒルのニック

昨年の欧州競馬はCamelotの英3冠挑戦などの話題があったものの、やはりFrankelの連勝記録に注目された方々も多かったのではないだろうか。

私も、そのレース振りに魅了され続けた一人であるが、結局14戦全勝してG1は10勝、特にG1を9連勝したのには恐れ入った。

全競走成績が英国におけるもので、『他国に遠征していても連勝していただろうか』などと意地悪な想像をしたりもするのだが、いずれにしてもスーパーホースであることに違いはない。

Frankel

バンステッドマナースタッドでの種牡馬入りも決まり、引退しても『英国の至宝』として存在し続けるであろうFrankel。

その血統は、父が欧州№1種牡馬であるGalileo、母の父はデインヒルであり、現代の欧州競馬の最先端を行っているような配合である。

非サンデー系なので、日本の生産者の方々にとっても魅力的な血統の持ち主だろう。

そこで、ここではFrankelの血統面にスポットを当てながら、今欧州で最も注目されている配合であろうGalileo×BMSデインヒルのニックについて考察したいと思う。

まずデインヒルの血統に目を向けたい。

ハートラインという考え方からしても、Galileo×デインヒル牝馬の組み合わせで重要な役割を果たす血脈だろうと推測する。

そのデインヒルの血統だが、何といってもNatalma3×3がある。

このクロスは、一方が息子を経て、もう一方が娘を経てクロスされているのだが、このように性的にリンクするクロスは自分の好みだ。

さらに、母内にあるNatalmaの位置はハートライン上にあり、このクロスをさらに意味のあるものにしているように思える。

すなわち、Galileo×BMSデインヒルによりデインヒルの位置がハートライン上にある点を考慮すると、Natalmaもまたデインヒルを通じて、このニックにおいてハートライン上に存在することになるからだ。

デインヒルの血統では、Lady Angela≒Alibhaiのクロスも面白い。

Lady Angela=Alibhai

いずれの血脈も父にHyperionを持ち、母の父系はTraceryという点で共通している。

この血統的親和性は、Northern DancerとGraustark/His Majestyの組み合わせを通じて見つけることが多い。

少し脱線すると、ダイワメジャーの母であるスカーレットインクにもLady Angela≒Alibhaiの組み合わせが存在する。

ダイワメジャー産駒の場合、Northern Dancerクロスを持っていると、Almahmoudクロスが派生するだけでなく、このLady Angela≒Alibhaiも強化されるのかもしれない。

現時点でダイワメジャー産駒の獲得賞金順トップ5はいずれもNorthern Dancerクロスを持っている。

さて、デインヒルの話しに戻るとして、彼の血統で最後に上げておきたいのがCrafty Admiral≒Buckpasserの組み合わせである。

Crafty=Buckpasser

いずれも母の父がWar Admiralで共通しているほか、両血脈ともにBull Dogを有していて、さらにTeddyのクロスを持っている点までも同じだ。

Crafty Admiral≒Buckpasserは、デインヒルのほかに種牡馬ではPolish PrecedentやHonor Grades、日本でも繋用されたブラックタイアフェアーの血統にも登場する。

さて、今度はGalileoの血統に注目してみる。

とはいっても、Northern Dancer/Mr.Prospectorの組み合わせや、それから派生するNative Dancerの性的にリンクしたクロスといったところが特徴だろうか。

『血を合わせる』という観点からすると、Galileoの父Sadler's Wellsと母Urban Seaはベストマッチというほどの血統パターンだとは思えない。

ただ、『X FACTOR』によればGalileoはPrincequilloのハートラインを受け継いでいるようだし、実際にこの血統パターンで英愛ダービーやKジョージを制しているのだから、他馬よりも優秀な心肺機能を有している可能性は大いにある。

一方で、父方(Sadler's Wells)だけで見るとNearctic≒Specialがあったり、母方(Urban Sea)だけで見ればPrincequillo≒Prince ChevalierやAralia≒Almyra、さらにはBelle Sauvage≒Espressoなど随所に興味深い血脈を持っている。

この辺りがGalileoの、あるいはKng's BestやSea the Starsのような近親馬の活躍につながっているのだろうか。

そして、これらのことを踏まえながらGalileo×デインヒル牝馬の配合に注目するとどうなるか。

Galileo=Danehill

まずNorthern Dancer3×4ができるが、これに伴いNatalma4×5*5のラインブリードも派生する。

デインヒルの代で性的にリンクしていたNatalmaが、Northern Dancerクロスを経てさらに強化される血統パターンだ。

加えて、デインヒルが持っていたLady Angela≒Alibhaiの組み合わせも、これまたNorthern Dancerクロスを経て活かされている形となる。

母の父あるいは2代母の父にデインヒルが入っているとき、Northern Dancerクロスを加えると上記のような組み合わせができるほか、Natalmaがハートライン上に位置する形でクロスされるので、競争能力の強化という点では好ましい印象を受ける。

一方、Buckpasser5×5ができるのもこのニックの長所だろう。

デインヒルが持っているCrafty Admiral≒Buckpasserが強化されるほか、Galileo×デインヒル牝馬の組み合わせから牡馬が生まれた場合はBuckpasserが1本、牝馬が生まれた場合は2本ともハートライン上でクロスされることになる。

そして、Galileoとデインヒルの血が合わさることで新たにできるのが、Miswaki≒Spring Adieuである。

Miswaki=Spring Adieu

両血脈ともNative Dancer系×Buckpasser系の組み合わせから生まれている。

また、MiswakiはNasrullah4×4を持つ一方、Spring AdieuもNasrullahの近親であるMahmoudを内包している。

こうして見てみると、Galileo×BMSデインヒルのニックは、血統的には非常に相性が良いように思える。

海外の血統関連サイトTrueNicksでは、Galileo×BMSデインヒルに関する興味深いデータがある。

2011年現在のもののようで、少し古いデータとなってしまうが、それでも十分に価値があると思う。

graph1

graph-2

①Galileo×BMSデインヒル、②Galileo×他のBMS、③他の種牡馬×BMSデインヒルという比較の表である。

3つの表とも出走率や勝ち馬率はそれほど大差ないのだが、ステークス勝ち馬率が大きく異なる。

すなわち、②や③のパターンのそれが8%や5%であるのに対し、①Galileo×BMSデインヒルになると全体で16%という高いアベレージを記録している。

特にすばらしいのはGalileo×BMSデインヒルから生まれた牝駒の場合で、そのステークス勝ち馬率は18%である。

この組み合わせから牝駒が生まれた場合、Buckpasser5×5のクロスは2本ともハートライン上でクロスされることになるのだが、この競走結果と何らかの関連性があるのだろうか。

さて、最後にFrankel単体の血統にも少し触れようと思う。

大部分は、既に指摘したGalileo×デインヒル牝馬の組み合わせで説明できると思うが、それ以外に指摘しておきたいのがRose Bower≒Stage Door JohnnyによるNearco/Prince Roseのニックを活かした組み合わせである。

Rose=Stage

Nearco/Prince Roseのニックは多くの一流馬に見られる組み合わせであるが、Frankelの場合は2代母Rainbow LakeもNasrullah/Princequilloのニックを活かした配合であり、マクロの視点からするとRose Bower≒Rainbow Lakeという見方もできる。

このような血統背景を持つFrankelだから、競走馬としてだけではなく、種牡馬としても多くの成功を収めそうだ。

個人的にもGalileo×BMSデインヒルのニックを持つ繁殖牝馬が欲しいところが、市場価値が相当高そうなのでまず無理だろう。

それでも、将来的にはFrankelの肌馬あたりを所有してみたいものだ。

サンデー系種牡馬との相性もかなり良いのではないだろうか。
[ 2013年01月23日 22:08 ] カテゴリ:配合・遺伝 | TB(-) | CM(0)

Xファクター 最終回 『4大Xライン』

原著 『X FACTOR』では、ハートスコアの測定プロジェクトが行われたと言及しているのが、そのなかで明らかになったのが、特定のXラインに属する馬たちの心臓はおおよそハートスコアが同じということである。

特定のXラインとは、すなわちPrincequillo、War Admiral、Blue LarkspurおよびMahmoudのXラインのことだという。

これらは『4大Xライン』と評されるほど、他のXラインに比べて大きな心臓を伝える傾向にあるらしい。

ここで一つ断っておきたいのは、この測定プロジェクトはおそらく米国を中心に行われたということだ。

だから、結果として4大Xラインも米国に馴染みのある馬たちの名前ばかりとなっている。

もし、欧州でも同様のプロジェクトがおこなれていれば、そこにはHyperionやNasrullahのような名前が大きな心臓を伝えるXラインとして登場してくるかもしれない。

自分が言いたいのは、米血脈ばかりが優れているわけではないということだ。

それを踏まえた上で、先に述べた4大Xラインについて紹介していきたい。



4大Xラインのなかでも、とりわけ大きな心臓を伝えるのがPrincequilloのXラインだ。

このPrincequilloのハートラインを持つ馬の例としては、米3歳牡馬チャンピオンのKey to the Mintを挙げておきたい。

Key to the Mint

ハートスコアの測定プロジェクトのなかで、最も大きな心臓を有していたのがこのKey to the Mintだったという。

Key to the Mintの母Key Bridgeは不出走だったが、4大XラインのうちPrincequillo、War Admiral、Blue Larkspurの3本をXライン上に持つという、大変価値のある繁殖牝馬である。

原著ではKey Bridgeがダブルコピー牝馬として紹介されているが、さらにその母Blue Bannerもまたダブルコピーだという。

Key to the MintにはKey to the KingdomというG3勝ち馬の半弟がいるのだが、彼の娘や孫娘のハートスコアを調査した結果、Key to the KingdomはWar AdmiralのXラインを受け継いだとのこと。

Key Bridgeの視点から言えば、彼女はおそらくPrincequilloから受け継ぐX染色体とWar Admiralから受け継ぐそれとを持つ、ダブルコピー牝馬だったのだろう。

Key to the MintとKey to the Kingdomは兄弟であり、母馬からのみX染色体を受け継ぐ点では共通しているが、その受け継いだX染色体が兄弟で異なっていたことになる。

最近の活躍馬では、何といってもGalileoか。

Galileo

今や欧州のトップ種牡馬であるGalileoだが、原著『X FACTOR』によれば、母の父Miswakiを介してPrincequilloのXラインを受け継いでいる種牡馬に分類されるとのこと。



Princequilloに次いで大きな心臓を伝えると思われるのが、War AdmiralのXラインだ。

そして、おそらく現代の競馬において最も成功しているXラインだろう。

War AdmiralのXラインを受け継ぐ馬としては、やはりBuckpasserを挙げておきたい。

Buckpasser

Buckppaserは米年度代表馬に輝いているが、自身の系統を父系として繁栄させることには失敗している。

ただ、その心臓はXラインを介して現在でも多くの名馬に受け継がれている。

特にBuckpasser牝馬がMr.Prospectorと交配されたとき、その組み合わせから生まれた牡馬は素晴らしい成績を収めた。

例えば愛2歳牡馬チャンピオンのWoodmanである。

Woodmanは種牡馬になってから多くの牡馬を輩出したばかりでなく、Bosra ShamやGay Gallantaのような牝駒のG1勝ち馬も輩出して、自身の心臓を娘たちに伝えている。

原著で紹介されている、もう一頭War Admiralの心臓を受け継ぐ馬としては、本邦繋用のワイルドラッシュを紹介しておく。

ワイルドラッシュ

ワイルドラッシュは、残念ながら諸事情により産駒頭数は多くないものの、G1馬をはじめ多くの活躍馬を輩出している。

ワイルドラッシュの心臓の大きさは、Xファクターの考え方からすると牝駒にのみ受け継がれるわけだが、その観点からすると、父の代表牝駒であるクラーベセクレタなどはWar Admiralの心臓を受け継いでいるのだろうか。

クラーベセクレタは、Buckpasser5×5*6を有しているのだが、その3本いずれもがXライン上に存在するという事実は大変興味深い。



次に取り上げるのはBlue LarkspurのXラインだ。

このXラインはPrincequilloやWar Admiralが伝える心臓の大きさに比べると小さいものらしいが、それでもWar Admiralとのコンビネーションで大きな心臓を伝えることがあるようだ。

Buckpasserの母BusandaやKey to the Mintの2代母Blue Bannerなどは、War Admiralの心臓タイプに属するものの、その血統内にBlue Larkspurとのコンビネーションを有している。

Blue LarkspurのXラインを受け継ぐ娘としては、Banish Fear(Cosmic Bombの母、Prince Johnの2代母)やBlue Delight(米3歳牝馬チャンピオンReal Delightの母)などが挙げられる。

現役の種牡馬のなかでは、TiznowがBlue LarkspurのXラインを受け継いでいるという。

Tiznow

Tiznowの母の父Seattle SongのXライン上にはBlue Larkspurがあり、Tiznowはその心臓タイプを受け継いでいることになる。



最後に取り上げるのが、MahmoudのXラインである。

このカテゴリーには、当然Northern Dancerの名前が登場する。

Northern Dancer

そのXライン上にはMahmoudの名前があるほか、Gainsboroughクロスのうち1本がハートライン上にあり、Mahmoudの遺伝効果を強化しているようにも思える。

このほかに、同じく2代母にAlmahmoudを持つHaloも、MahmoudのXラインを受け継いでいるという。

そして、そのNorthern DancerやHaloをXライン上に持つFusaichi PegasusやWith Approvalなども、MahmoudのXラインを受け継いでいる種牡馬らしい。



以上が4大Xラインと呼ばれるものに属する馬たちであるが、原著にはもっと多くの名馬・名種牡馬・名牝の名前が大きな心臓を持つであろう馬としてリストアップされている。

興味のある方は、是非2冊の原著を手にすることを薦める。

『X FACTOR:What it is & how to find it:The Relationship Between Inherited Heart Size and Racing Performance』Marianna Haun著

『UNDERSTANDING THE POWER OF THE X FACTOR:Patterns of Heart Score and Performance』Marianna Haun著
[ 2013年01月11日 18:28 ] カテゴリ:配合・遺伝 | TB(-) | CM(0)

Xファクター 第4回 『ダブルコピー牝馬』

Xファクターの第4回は、ダブルコピー牝馬について取り上げる。

過去3回のXファクターに関する記事では、大きな心臓という特徴はX染色体を通じて伴性遺伝するという考え方を中心に展開してきた。

牡馬は、Y染色体とX染色体を1本ずつ持っている。

牝馬は、Y染色体は持っていないが、その代わりにX染色体を2本持つ。

産駒が生まれる際、種牡馬はYかXのうちの1本を、繁殖牝馬はペアのXのうち1本を伝える。

このとき、種牡馬がY染色体を伝えれば牡馬が、X染色体を伝えれば牝馬が生まれる。

牝馬は2つのX染色体を持つが、1つは父側から、もう一つは母側から受け継ぐ。

そして、牝馬の持つ2つのX染色体のいずれもが大きな心臓を伝えることのできる特徴を持っている場合、原著ではそのような牝馬を『ダブルコピー牝馬』と呼んでいる。

ダブルコピー牝馬が牡馬を産んだ場合、牡馬は母馬からのみX染色体を受け継ぐが、母が2本持つX染色体のうちどちらを受け継いでも、母がダブルコピー牝馬のため、その牡馬は結果的に大きな心臓という特徴を持つ遺伝子を受け継ぐ。

ダブルコピー牝馬が牝駒を産んだ場合は、父が大きな心臓を持っているなら、その牝駒もダブルコピー牝馬と見なすことができるだろう。

もし普通の心臓を持つ種牡馬とダブルコピー牝馬が交配されて、結果として牝馬が生まれた場合、その牝駒は『シングルコピー牝馬』である。

シングルコピー牝馬とは、2つのX染色体のうち1つだけが大きな心臓という遺伝子情報を受け継いでいる牝馬のことを指す。

また、いずれのX染色体も大きな心臓とい遺伝情報を持ち合わせていない場合、その牝馬は『ゼロコピー牝馬』である。

原著である2冊の『X FACTOR』のなかで、ダブルコピー牝馬の最たる例としてA.P.IndyやSummer Squallの母であるWeekend Surpriseを挙げている。

Weekend Surprise

この牝馬は、大きな心臓を持っていたSecretariatを父に持ち、母Lassie Dearもまたダブルコピー牝馬という血統背景から生まれている。

Weekend SurpriseのXライン上にはPrincequilloが2本あり、一つはSecretariatから、もう一つは彼の半兄Sir Gaylordから伝わっているものだ。

Weekend Surpriseのハートスコアは137だったが、この数値はSir Gaylordのハートラインに属するものらしい。

つまり、Secretariatの心臓の大きさはWeekend Surpriseの体においては劣性となっているが、その遺伝子情報はSecretariatから受け継いだX染色体とともに持っている。

Sir Gaylordの伝えるX染色体からは、ハートスコアにして137~140程度の心臓が伝わるようで、Sir GaylordをXライン上に持つ馬に対してしばしば見られる特徴だという。

そういえば、他の方々の血統関連のサイトやブログを覗くことがあるのだが、なかにはダブルコピーを異なった形で捉えている方もいらっしゃるようだ。

すなわち、Xライン上にクロスを持つ牝馬がダブルコピー牝馬だという考え方だ。

原著通りの考え方でいけば、自分がこのブログで展開している考え方で良いかと思うが、一方でWeekend Surpriseのような有名なダブルコピー牝馬にはしばしばXライン上のクロスという特徴も見られる。

Weekend Surpriseの血統で言えばSomethingroyalのクロスがこのパターンに該当するし、他の有名なダブルコピー牝馬としてはSeattle Slewの母My Charmer、古くはLa TroienneやPocahontasというダブルコピー牝馬もXライン上にクロスを持っている。

有名な牝馬にダブルコピーが多く存在する一方、シングルコピーながらケンタッキーダービーを制覇した牝馬もいる。

それがWinning Colorsである。

Winning Colors

原著によるとこの牝馬は大きな心臓を持っているが、それは母方のハートラインから受け継いだ特徴であるという。

なぜなら、父Caroの心臓は解剖の結果、普通サイズのものだったからだ。

Winning Colorsの持つ大きな心臓は、おそらく彼女の2代母Miss Carmieからくるものだろう。

Miss Carmieは、自身の全てのXライン上に大きな心臓を持つ馬たちを配している馬である。

そのため、Miss Carmieもダブルコピー牝馬として原著では紹介されている。

Winning Colorsのようなシングルコピー牝馬でも、2本あるX染色体のうち大きな心臓を伝えるX染色体のほうを産駒に伝えれば、その産駒も大きな心臓を持つ可能性がある。

牝駒のゴールデンカラーズ(父Mr.Prospector)は確率のゲームに勝ち、大きな心臓を受け継いだのだろうか。

彼女はOPのフローラS(芝1400)に勝ってG3クイーンSにも2着しているが、繁殖牝馬としてはさらに優秀で、8勝してG3キーンランドCを制したチアフルスマイル(牝、父サンデーサイレンス)を輩出している。

ちなみに、Miss Carmieの心臓はBlue Larkspurのタイプに属するものらしい。

Weekend Surpriseは、Sir Gaylordを経てPrincequilloの心臓タイプに属するという。

PrincequilloとBlue Larkspurは、ほかにWar AdmiralとMahmoudを加えて、原著では4大ハートラインと呼ばれている。

次回はその4大Xラインの例を何頭が挙げて、この『Xファクター』シリーズの最終回にしたいと思う。
[ 2013年01月09日 08:11 ] カテゴリ:配合・遺伝 | TB(-) | CM(0)

Xファクター 第3回 『ハートスコア』

Xファクターの第3回は、『ハートスコア』と呼ばれるものに焦点を当てたい。

ハートスコアとは、競走馬の心臓のサイズをわかりやすいように数値化したものである。

ハートスコアは、シドニー大学のSteel博士を中心にオーストラリアの研究者らによって考案された。

その対応表によれば、心臓重量3kgがハートスコア100に相当し、以下3.8kg→110、4.6kg→120、5.4kg→130、6.2kg→140、7kg→150、7.8kg→160という具合になっている。

では、大きな心臓と平均以下のそれとを分ける基準値はいくつなのか。

オーストラリアのStewart博士は、以下のように区別している。

・ハートスコアが103以下…小さな心臓と見なす

・ハートスコアが104~116…標準的な大きさの心臓

・ハートスコアが117以上の牝馬…大きな心臓

・ハートスコアが120以上の牡馬…大きな心臓

以上のような形で区別された。

そこで、実際に高いハートスコアを持つ馬、すなわち大きな心臓を持つ馬はレースにおいて高い競走能力を示すのかという疑問が生じてくる。

オーストラリアのある年度に行われた調査では、AJCダービーもしくはヴィクトリアダービーに出走した22頭のうち18頭の競走馬に対して心臓の調査が行われたが、そのうち実に17頭が120~136というハートスコアを示した。

同じく、メルボルンCもしくはコーフィールドCで優勝した20頭の勝ち馬のうち、15頭が120以上のハートスコアを記録している。

これら4レースは、オーストラリア国内のレースのなかでも格付けの高いレースだ。

ハートスコアにおける100と120という数字の違いは、20という単純な数値の違いよりも、心臓機能という点で数字以上の違いがあるようだ。

ハートスコア100=心臓重量3kgの1回拍出量(それぞれの心室から1回の心臓の鼓動によって駆出される血液量)は0.5リットルであるのに対して、ハートスコア120=心臓重量4.6kgのそれは1リットルである。

『X FACTOR』のなかで、Stewart博士の言葉が紹介されている。

『…1回拍出量が1リットル以上の大きな心臓を持つ馬と、1回拍出量がその半分以下の心臓を持つ馬とを比較したとき、この両者の調教効果にはかなりの違いがあるはずだ…』

ハートスコアは心電図を用いて測定する方法が確立されているようで、原著にもその方法が記されているが、自分は獣医でもなければ心電図を扱えるわけでもないので、その部分はあまり読んでいない。

『X FACTOR』の原著なかでは、巻末に実例として有名馬のハートスコアを何頭か紹介している。

例えば、1990年代の活躍馬でいえばHoly Bullのハートスコアは147だとされている。

今となっては入手困難になっているこれら2冊の本だが、興味のある方は機会があれば是非手にしてほしい。

一部ではプレミアが付いた値段で売られているようだ。

自分が米国の本屋で買った時や、ネットで第2巻を購入したときは通常の値段で買えていたのだが…。

次回のXファクターでは、大きな心臓を伝えるX染色体をホモ因子で持つとされる“ダブルコピー”と呼ばれる牝馬たちに焦点を当てたい。
[ 2013年01月08日 07:58 ] カテゴリ:配合・遺伝 | TB(-) | CM(0)


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