クリソライト(GIジャパンダートダービー)

ダート界のニューヒーロー誕生と言っていいだろう。
今年のジャパンダートダービーは、1番人気のクリソライトが早めに抜け出し、直線では後続を引き離しての圧勝。
一頭だけ次元の違うレース振りで、乗せているエンジンが違った感がある。
父仔制覇となるこのレースでは、2着に7馬身差もつけて優勝したのだが、これは父ゴールドアリュールが同レースで優勝した時の着差とまったく同じだ。
パドック映像を見た限りでは、牡馬らしい堂々とした体つきをしている。
長躯短背のカテゴリーに入るタイプの馬体で、繋が短めながら柔らかいという特徴は、父から受け継いだものだろう。
一方、やや首が短い馬でもあり、この特徴に関しては母父エルコンドルパサーの影響が出ているかもしれない。
エルコンドルパサーは前述のような首の短いタイプか、もしくは全体に伸びがあって薄手の馬体か、という2通りの産駒を輩出する傾向にあった。
JDD前の調教VTRを見ると、まっすぐそして力強く駆け上がってくる姿が印象的で、特にかき込むような前脚の使い方からは明らかにダート適性を感じる。
実際、父がゴールドアリュールで母はJCダート馬アロンダイトの全姉なのだから、配合段階から“ダートの鬼”を生産しようと意図していたのかもしれない。
父のゴールドアリュールは、現役時にダートGIを4勝した強豪だったが、新馬戦を芝で勝ち上がっていたりダービーでも5着するなど、ある程度の芝適性も備えていた。
サンデー×Nureyev牝馬という配合からは、薄手の馬体ではないにしろある程度柔らかい馬体を想像するのだが、ゴールドアリュールの場合は明らかにパワータイプの馬体だ。
この馬体的影響は、彼の血統表を見る限りHostageあたりから受け継いだのだろう。
Hostageに関しては、実馬を見る機会を得たことはないものの、写真などを見るとNijinsky系らしい力強さと雄大さを感じさせる。
その影響か、ゴールドアリュールも馬格のある種牡馬だ。
ただ、繋のつくりなどはダート馬らしく短い繋ではあるものの、芝でも成績を残していたように歩様などからは十分な柔軟性が窺える。
例えばサウスヴィグラスなどもそうだが、ダート系種牡馬で短い繋をしているとはいえ、その繋はやはり柔らかいほうがベターなのかもしれない。
さて、ゴールドアリュールの血統で特徴的なのは、Hyperionのラインが強い血脈が3本存在する点だろう。



このMountain Flower(サンデーサイレンスの2代母)、Nureyev(ゴールドアリュールの母父)そしてVaguely Noble(ゴールドアリュールの3代母の父)の3頭は、いずれもHyperionクロスを持つ血脈だ。
Hyperionのラインは持続するスピードを伝える傾向にあるが、直線の長い東京コースの芝レースであるダービーで5着したという成績も、このHyperionの影響なのだろうか。
クリソライトの母クリソプレーズは、JCダートを制したアロンダイトの全姉にあたる。
この全姉弟の血統パターンで特徴的なのは、Nearco/Prince Roseのニックを持つ血脈が3本存在する点だ。
すなわちSeattle Slew、RivermanそしてPrince Tajの3頭である。

一つの血統表に3つの血脈を押し込めている。
いずれもNearco/Prince Roseのニックを持つ血脈であることがわかるはずだ。
クリソプレーズはアロンダイトと全きょうだいの関係にはあるが、両親から受け継いだ染色体には違いがある。
これは性別の違いからくるもので、アロンダイトは牡馬であるから受け継ぐ染色体のタイプはXY、一方クリソプレーズは牝馬なのでXXである。
重要なのは、クリソプレーズが父エルコンドルパサーからY染色体ではなくX染色体を1本受け継いだ点にある。
エルコンドルパサーが牝駒に伝えるX染色体は母サドラーズギャルに由来するものだが、サドラーズギャルはその血統背景からダブルコピー牝馬だと推察される。

エルコンドルパサーはダブルコピー牝馬の息子なので、いずれのX染色体を受け継いでも大きな心臓の因子を牝駒に伝えることができるというのがXファクターの考え方だ。
そのため、クリソプレーズが牝馬であることが重要なのである。
ゴールドアリュール×エルコンドルパサー牝馬の組み合わせからは、Special=Lisadellの全姉妹クロスが4×5・6・6でクロスする。
この配合で牡馬が生まれた場合には2本が、牝馬が生まれた場合には4本中3本がハートライン上でクロスされることになる。
ハートライン上のクロスは配合手法として有効である考えているが、そのことは『サラブレ』や『サラBLOOD!』誌に寄稿した記事のなかでも紹介させて頂いた。
ゴールドアリュール×エルコンドルパサー牝馬の血統を持つ馬は、中央で10頭中6頭勝ち上がっていて(7月24日現在)、ある程度の相性の良さを証明している。
この組み合わせでは、父の血統的特徴であるHyperion系の血脈が母父エルコンドルパサーの血統にも多く含まれていることから、産駒の代でもその血統傾向を継続させることが可能だ。
また、母クリソプレーズが持つSeattle Slew≒Riverman≒Prince Tajに関しても、父ゴールドアリュールの4代母Shoshannaが同様のニックを持っているので、クリソライトの配合にも生かされた。
要は、クリソライトは父母の血統的長所をうまく受け継いだ血統パターンの持ち主だと言っていい。
自分が血統評価するとき『A+ A B+ B C C- D』と7段階で評価することにしているのだが、私がもしクリソライトの血統に評価を与えるとしたら“A”である。
彼の血統を考察した限りは、その潜在能力はもしかしたら父より上ではないか。
ホッコータルマエをはじめ、現在ダート中距離の古馬勢は層が厚いが、この3歳馬ならレースであっさりと千切ってしまう場面が見られるかもしれない。
それほどの逸材だけに、今後の成長ぶりには大いに注目している。
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Author:G
馬産地・日高に住む某牧場関係者
不定期に血統ブログをup中