私的血統論

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馬のスピード遺伝子(ミオスタチン)

遺伝学に詳しい方や血統派の人たちのなかには、ウマにおける全遺伝子情報の解読が2009年に完了したことをご存知の方も多いはず。

これにより馬の毛色や体高に関わる遺伝子など、さまざまな発見がもたらされている。

そのなかで、いま世界中で注目されているのが、馬の距離適性に関わる遺伝子の特定とその研究成果である。

ミオスタチンと呼ばれるこの遺伝子は、筋量を抑制する役割を持っている。

ミオスタチンの機能が向上すると馬の筋肉量は少なくなり、その遺伝子機能が減少すると筋肉量が多くなるという具合だ。

ミオスタチン遺伝子には、C型とT型という2つの変異体があり、その組み合わせにより3タイプが存在する。

すなわちC:C型、C:T型そしてT:T型である。

これに関連して、愛国の遺伝学者であるE・ヒル博士と同国の一流調教師であるJ・ボルジャー氏が、共同で馬の遺伝子検査サービスを提供する「エクイノム」社を設立した。

この会社が提供する「エクイノム・スピード遺伝子検査(Equinome Speed Gene Test)」は、当該馬から採取した血液サンプルを遺伝子検査にかけてC:C型、C:T型、T:T型のどのタイプであるかを特定するサービスである。

驚くべきは、そのミオスタチン遺伝子の組み合わせによって、馬の距離適性が高い確率で予測可能だというのだ。

エクイノム社の研究結果によると、C:Cタイプはスピードがあり筋肉質の馬体をしていて、いわゆるスプリントタイプ。

その距離適性は1000~1600Mだとしている。

C:Tタイプは、ある程度の速さを持つ中距離タイプで、その距離適性は1400~2400Mとされる。

T:Tタイプは、この3つのタイプのなかでは最もスタミナのあるタイプで、その距離適性は2000M以上となっている。

実は昨年になって、このスピード遺伝子検査が日本の競走馬理化学研究所でも検査可能になった。

この検査を普及させる目的のためか、厩舎関係者に説明会が開かれたと聞いているし、実際に馬産地でもミオスタチンとその検査に関する講演会が複数回開催されている状況だ。

すでに日本においてはミオスタチンの研究がされていて、あるデータによると無作為に抽出したある馬群に対して実施した遺伝子検査の結果、C:Cが17%、C:Tが56%、T:Tが27%であったという。

さらに、あるOP馬群の遺伝子タイプを解析した結果、C:Cが16%、C:Tが70%、T:Tが14%だったとのことだ。

このOP馬のグループに関しては、それぞれ1着~3着という馬券圏内に入着した際の平均出走距離が算出されている。

その結果、各馬の出走距離と彼らの持つミオスタチンの遺伝子型に関連性が認められたとの報告がある。

ところで、JRA重賞は全134レース(障害含む、2013年度現在)あるが、これをC:C、C:T、T:Tの距離適性と比較するために、①1400M以下②1600M~2400M③2500M以上、と3つのグループに分けてみた。

結果は①1400以下の重賞の数が25レース(19%)、②1600M~2400Mの重賞が90レース(67%)、③2500M以上の重賞が19レース(14%)という内訳であった。

こうしてみると、無作為で抽出したグループに比べて、OP馬のグループによるミオスタチンのタイプ比率のほうが、日本の重賞レース体系の距離分け比率と酷似しているのがわかる。

視点を変えれば、OP馬のような能力の高い馬ほど本来その馬たちが持つ距離適性に合ったレース選択がなされていて、その結果“OP入り"という好成績につながった、という考え方もできる。

では、他国の場合はどうか。

例えば、オーストラリアのG1競走は短距離レースの割合が多く、国内の全G1レースのなかで1400M以下のG1の割合は37%とのことだが、これは米国の20%や英国の12%に比べるとはるかに大きい数字だ。

そして、オーストラリアで重賞勝利経験のある種牡馬および繁殖牝馬を対象(計123頭)にスピード遺伝子検査を実施したところ、C:Cタイプが38%、C:Tタイプが51%、T:Tタイプが11頭だったというデータがある。

ここでも、オーストラリアにおける短距離のG1レースの割合(37%)と活躍馬のC:Cタイプの割合(38%)がほぼ同じだった。

これは単なる偶然だろうか。

もしかすると、各国のレース体系の違いが、それぞれの国における競走馬のスピード遺伝子型の割合に影響を与えているのかもしれない。

エクイノム社がある欧州では、ミオスタチン遺伝子のタイプを公表している馬もいる。

昨年の英2000ギニーで5馬身差をつけて圧勝し、現在は種牡馬として繋養されているDawn Approachも、その一頭である。

Dawn Approach

エクイノム社の共同設立者でもあるJ・ボルジャー師が管理していたDawn Approachは、2歳時(2012年)に6戦全勝して英G1デューハーストS(7F)と愛G1ナショナルS(7F)を制して、全欧2歳牡馬チャンピオンに選ばれた。

J・ボルジャー師はこの馬の生産者でもあるが、ボルジャー師はDawn Approachの父New ApproachがC:T型であることも、母Hymn Of The DawnがC:C型であることも事前に認識したうえで配合し、結果としてC:C型のDawn Approachが生まれたという。

C:T型とC:C型が交配された場合、この遺伝子はメンデルの遺伝の法則に従うので、C:C型かC:T型のいずれかが生まれることになる。

ちなみに、2012年にゴフス社のセリ市でDawn Approachの全妹にあたる1歳馬が上場されたが、この馬は事前にC:Cタイプであることを公表していた。

結局、この牝馬は€775,000という高額で落札された。

もう一頭、欧州に繫養されている種牡馬から例を挙げると、英G1デューハーストSの勝ち馬にして昨年の欧州ファーストシーズンサイアーランキングで第2位だったIntense Focusもミオスタチンを公表している種牡馬だ。

Intense Focus

この種牡馬のミオスタチンはC:C型だという。

また、彼の種牡馬成績は、初年度産駒から英G1ミドルパークS(芝6F)の勝ち馬Astaireを輩出するなど好調だ。

やはりC:C型だけあって、短距離レースの多い2歳戦は得意なのだろう。

Intense Focusの場合に限って言えば、ミオスタチンの遺伝子型と産駒成績に関連性がありそうな印象だ。

Intense FocusはGiant's Causeway産駒だが、日本でも同じ父を持つエーシンスピーダーがスピード遺伝子検査を受けたという。

エーシンスピーダー

具体的なミオスタチン型は公表していなかったはずだが、関係者の話しでは彼には長距離適性があるとのこと。

ということは、エーシンスピーダーのミオスタチンはT:T型なのだろう。

メンデルの遺伝の法則を理解している方なら、C:C型とT:T型の産駒を出せる種牡馬はC:T型だけだとおわかりだろう。

つまり、Intense Focusとエーシンスピーダーのミオスタチン型から、Giant's CausewayはC:T型だと推察することができるのだ。

一方、オーストラリアの種牡馬市場でも、ミオスタチンを公表する動きがある。

これにより、繁殖牝馬のオーナーたちに計画的な配合を推奨しようという狙いがありそうだ。

例えば、オーストラリアのWidden Studでは、繋用されている全9頭のミオスタチンを公表、その内訳はC:C型が7頭でC:T型が2頭だった。

やはり、スピード競馬が盛んなオーストラリアだけあって、そのなかで選別されてきた種牡馬たちは遺伝的にもスピードタイプが多いようだ。

このように、ミオスタチン遺伝子を調査することでそれをビジネスにつなげる動きは、世界中で広がりを見せつつある。

米国においては、愛国エクイノム社とは異なる方法でスピード遺伝子検査を実施する会社があり、エクイノム社が血液サンプルを用いて遺伝子検査するのに対し、この会社の場合は採取した鬣(たてがみ)や尾の毛を用いて遺伝子検査をする。

そこで問題となっているのが、毛の採取ルートである。

海外のセリ市などで、一部のバイヤーが購買候補の馬の毛を勝手に抜いて、遺伝子解析に回すケースが起きているというのだ。

さらに、このような事態を受けて、それを規制するような動きもあるとか。

急速な拡がりを見せているスピード遺伝子検査であるが、ここで注意しなければならないのは、ミオスタチン遺伝子のタイプが馬の距離適性を100%確定させるものではないということである。

実際、研究結果のなかには、T:T型にもかかわらず短距離で勝利するような馬の存在も複数報告されているという。

つまり、これはあくまで科学的根拠に裏付けされた一つの『指標』であり、その扱い方を誤らないことが大切なのである。

例えば、生産者や繁殖馬のオーナーは、スピード遺伝子検査を利用することにより距離適性を予測しながら配合できるかもしれない。

調教師は、管理馬の遺伝子型を調べることにより、『どの距離で出走させれば十分な能力を引き出せるか』という一つの判断材料を得ることができるだろう。

一部海外メディアによる記事では、この検査と一連の動きについて『聖杯を手にするにも等しい』と評していたが、実際その扱い方によっては競馬業界に大きな変革をもたらすかもしれない。
[ 2014年05月09日 19:22 ] カテゴリ:配合・遺伝 | TB(-) | CM(0)
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